The Works
製造現場のしごと
飫肥杉のトップグレード
宮崎県には大小さまざまな製材所や加工所が存在しますが、植村産業とタッグを組み商品開発から製造を担うのはその最大規模を誇る企業です。
製造拠点は県内に3箇所を持ち、その全てがログヤード、製材設備、乾燥設備、加工から出荷までのオートメーションを完備。中でも最新設備が揃う画像の工場では4,000立米のログを管理でき、樹齢15〜45年の飫肥杉を用途により使い分けています。
画像、奥に見える施設はログの受け入れ検品の設備。生産者から運び込まれたここでスキャンされ、最上級品と認められたログのみを材料として利用。それ以外は海外へと輸出されます。
前述の挿し木の技術でばらつきを抑えたログは計画伐採により毎日大量に取引されますが、伐採と連動して植樹も行われており、宮崎県の林業は健全かつ安定した資源・環境形成ができています。これは木技センターが早期に課題解決にに取り組んだ、従来は用途に困りがちだった大径木などの利用方法をしっかりと確立できたことも影響しています。
製材(挽き割り)の工程
たとえば、柱をつくるなら小径木。デッキ材のような板をつくるなら、より大きなログから材料を取るのが効率的です。ログの断面は円形で、外周の白いところ=白太は耐候性が低いため用途が限られます。
ひとつひとつ同じではないログからどういうサイズがいくつ取れるか、ディバーカーで樹皮を外されたログが入る最初のラインで、それはコンピュータを介したスキャンで決定されます。
需要により6x6インチ、146mm角材のような大きな材からデッキのような板、垂木や胴縁、野地板など大小さまざまな建築材料までがログの無駄を最小限に抑え、樹皮ぎりぎりの切れ端にしか見えないような部分にも「かまぼこ板」という規格サイズがあてられ、利用されています。
奥に見えるのがログの受け入れ施設。スキャンニングで最上級品を仕分けている
合格品はチェーンで運び出されフォークリフトで移動、サイズ別に管理される
ヤードからディバーカー(皮剥き機)へ搬入されるログ。
ここから屋内の製材ラインへ直結している
中温度帯用乾燥設備。65〜85℃でじっくり水分を抜く
高温度帯用乾燥設備。100℃以下〜150℃のポテンシャルを持ち、
その中で加熱を制御する際に用いられる
人工乾燥の工程
求められるサイズに製材された材料は、必要に応じ乾燥の工程へと進みます。乾燥のしかたには大きく分けて下記の2種類があります。
① Air Dry(AD、自然乾燥)
② Kiln Dry(KD、人工乾燥)
ADは何ヶ月も材料を外気に晒し、KDでは熱伝導の限界で対応できない大断面材や、その他特別な目的のときに採用される方法です。対してKDは数日の乾燥設備の使用で、加熱によって内部の水分を活性化させ、放出させていく工程になります。
お料理で、食材が60℃くらいから柔らかくなり、甘みが出てくるのは糖類の水素結合が切り離されることが原因で、この時点で内部の物質が熱を通されることで成分の活性度が上がり、その後冷却されるとパキッと締まった感じになるのは水分が放出されるためです。
乾燥設備では窯内の熱気からの対流熱と温められた木材表層からの伝導熱が作用するので、この基本的な工程の対応力を上げるための設備が「高温度帯用乾燥設備」です。
大断面材などで内部までの熱伝導が困難な際にさらなるパワーを求めるものですが、その加熱制御によっては表面だけを焼き締めて油分の放出を防いだり、といったテクニカルな操作も可能になります。厚めのお肉を調理する際、まず鉄板で表面に焼き入れをしてからオーブンに入れる、という感覚が近いでしょうか。
乾燥工程ひとつをとっても、製材のプロ集団と質・量ともに充実した設備、そして研究に特化した木研センターの存在、私たちユーザー側からのフィードバック。その全てが揃い、機能して、たくさんのアイデアの中から製品ごとに最良の結果を導き出します。
ロスを出さないということ
この業者の工場においては、いずれの拠点においても熱源に石油燃料を使っていません。ディバーカーで剥ぎ取られた樹皮のほか、製材や加工で出る粉塵、木取りの端材となってしまった小さな木片、それらが全てその場で集塵され、構内の長いダクトを走ってボイラー設備のサイクロンで分離、燃料となります。
この巨大な熱源は工場とともに常時稼働し、専属のボイラーオペレーターがモニタリングをしています。ここからのエギゾーストがその温度を管理された状態でそれぞれの乾燥設備へと送り込まれ、精密な加熱加工を実現します。
また製材加工業者でありながら一切の端材やゴミを出さず熱源を自家調達するという効率も達成しており、それは環境負荷とコストのいずれをも軽減します。このうち端材の一部がチップとなって取り分けられ製紙業者に販売されたり、木粉の一部も畜産業の敷床となるなど別の二次利用も実現しています。
それぞれの工場内に設置されるボイラー設備。
屋上のサイクロンは各設備からダクトでつながり、燃料となる端材や粉塵を運ぶ
デッキ材が流れるライン。機械と人の手を適時介していく
主要な機材にはマイクロ波による含水率チェック機能が組み込まれている
この設備には上下で1ユニットのチェッカーが3箇所に設置されている
加工と品質チェック
乾燥を終え安定した材は、プレーナーや6軸モルダーなどの機械に通され、それぞれにセッティングされた形状、寸法へと加工され完成品となります。
この際、加工に先立ち材不良に対する検品のほか、必要に応じその節の状態なども考慮した仕分けも行われます。完成品のカウントや梱包、出荷待ちの入出庫なども可能な限り機械設備とコンピューターを駆使して行われますが、機材のところどころにマイクロ波を照射してすべての製品の含水率を計測するユニットや、その曲がりを検知する機能が付加されていることに気付きます。これらのチェッカーで基準値をオーバーした個体はその場で仕分けられ、最適な対処を待つことになります。
加工、検品、結束とラッピングを終えた製品はようやく宮崎の地を離れ、名古屋港に配送拠点を持つ私たちの倉庫へと陸路、トレーラーで送り届けられます。なお、宮崎県内で製材と加工のすべてを取り揃えた3拠点のうち、植村産業とのコラボレーション製品は最も製品精度に特化した工場が製造を担当します。
ウッドデッキ用2x6相当材、4x4相当材、そして6インチT&Gの外壁用サイディング材。これらが求められる性能をそれぞれに最適化、最大化することを目標に、企画の段階から技術者と連携し、さまざまな工夫を盛り込みました。
乾燥工程の新しいアイデア
ウイスキーやブランデーの製造に使われる、「蒸留」という手法があります。
これは水分とそれ以外の沸点の違いを利用して、気体からより純度の高い液体を取り出すというものです。
人工乾燥施設の扉の写真ですが、ここでその蒸留に近いことが発生してしまっています。黒く付着した塊は、熱処理の中で蒸散し鉄の扉で結露した飫肥杉の油分。つまり、耐候性を担保する成分が一部失われていることになります。
植村産業モデルの外壁では、この問題とKD、ADの特性に向き合い「PAD乾燥」という最適化されたアイデアでより一層優れた性能を求めます。
人工乾燥設備の鉄扉を開けた裏側。
蒸散し、ここで結露した飫肥杉の油分が確認できる
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