20+ Years of Analysis
研究結果
宮崎県立 木材利用技術研究センター
飫肥杉エリアを含む宮崎は、前述のようにスギの生産量で日本一を誇る県です。
この大量の林業資源が収穫期を迎え、あるいはそれを過ぎて大径化することで生まれる課題に取り組むために、2001年の4月に設立されたのが木材利用技術研究センター、通称「木技センター」です。
3.2haの広大な敷地に工法の異なる6棟の建物が配置され、それぞれが研究、実験に供されるほか構造、外壁、サッシ、床や建具にも積極的に県産の杉を使用しており実使用の上での経年観察モデルとしての機能も果たしています。また敷地内ヤードは暴露試験場として機能させており、木材や塗装の耐候性をさまざまな条件で検証することができるようになっています。
飫肥杉の耐候性試験
木材が腐る、つまり腐朽菌によって有機物が分解される、そのトリガーとして腐朽菌が繁殖するには以下の条件が必要となります。
① 水分(湿度85%、木材含水率20%以上がピーク)
② 温度(20〜30℃がピーク)
③ 酸素(稀に二酸化炭素のみで活性化する菌もある)
④ 分解対象である有機物
①〜③は屋外設置であれば容易に達成される条件です。④は木材においてはセルロースなどの細胞壁を形成する物質と、それを強固にしているリグニンが対象となります。
有機物は経年変化でその特性を失うと考えられがちですが、特にリグニンは白色腐朽菌に分解されるか、200℃まで加熱しないと(コーヒーの種子を焙煎するとバチバチ音がするのはこのため)いつまでも崩壊しない特性があり、樹木の長期保存からなる化石化=石炭が誕生する原因ともなっています。
これだけ条件が揃った中での屋外暴露試験で、飫肥杉の持つ耐候成分が菌類の活性を抑えることができるかの結果が写真のような様子で出ています。
湿潤状態から直射日光下への急激な変化を幾度となく経た薄い板材が割れたり、あるいは夏目部分を中心に痩せたりの変化があるものの腐食の起こった形跡が未だ認められないというのがこの試験の示すものです。
セルロースの分解は木目と交差する大きく連続した表面割れが、リグニンの分解は灰のような真っ白な姿への部分変化が見られるものですが、この試験の姿からはそれらを防ぎ切っていることがわかります。
暴露試験の期間は、写真(上)が5年、(下)はなんと20年とのことです。
この耐用年数は驚異的なもので、これを達成できる針葉樹はカリフォルニアのセコイア、カナダのノーザンホワイトシダーに続いてこれが3番目の出会いとなりました。
飫肥杉(無塗装)の屋外45°暴露試験、撮影時で約5年経過
飫肥杉(無塗装)の屋外45°暴露試験、撮影時で約20年経過
さまざまな試験内容と、その結果
このほか壁面を想定した90°設置での試験、耐蟻の検証もできる杭を地面に打ち込む試験、アメリカ式のダブルレイヤー設置試験、地面にウッドデッキとフェンスを施工、固定しての試験などをカナダ産レッドシダーなど比較対象を交え実施しており、飫肥杉はそれらに対し優れたスコアを今も更新し続けているとの結果が報告されています。
これほどの高性能材が国内プロセスで製品化されて、どういうコスト感になってしまうのか。そういった危惧を吹き飛ばしてしまうような価格を実現できるのは、生産者たち自身が過度な価格変動を起こすようなログの取引が起こらないようコントロールをしていること、加工業者がその工程のあらゆるロス発生を再利用可能なものとして活用するなど、そこには「携わる人たちのしごと」が大きく関わっていることが、現地と交流する中で明らかになりました。
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